公正証書か自筆か
遺言書の種類
遺言書には大きく分けて2つの種類があります。
- 「公正証書遺言」
- 「自筆証書遺言」
簡単に説明すると、以下のようになります。
- 公正証書遺言とは「公証役場で公証人に作ってもらう遺言書」
- 自筆証書遺言とは「自分の手で書く遺言書」
それぞれに特長があるのですが、当事務所では「公正証書遺言」をおすすめしております。
自筆証書遺言に比べて、公正証書遺言の方が費用は少し高くなるのですが、おすすめするには理由があります。
公正証書遺言をおすすめする理由
- Point 1無効になる可能性が低い
- 遺言を公正証書で作る場合は、公証役場に赴き、公証人(元裁判官、元検察官など)に書面を作ってもらいます。公証人は遺言を作るご本人と面談し、「判断能力があるか」「本当に自分の意思で遺言するのか」などをチェックしますので、万が一裁判になっても、遺言作成時には認知症ではなかったと認められる可能性が高いです。
- 守秘義務のある行政書士に公正証書遺言の作成を依頼されると、当日の立会証人(※相続人等は不可)もつとめさせて頂きます。
- →遺言書は、守らなければいけないルールが民法という法律で細かく決まっていて、1つでもルールが守られていない場合、遺言書全部が無効になってしまいます。自筆証書遺言では無効または紛争になる危険性がついてまわります。
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→無効になる遺言書例
- Point 2紛失・偽造・改ざんの危険性がない
公正証書遺言の場合、原本は公証役場にて、遺言を作った本人が120歳になるまで(京都の場合)厳重に保管されます。ですので、遺言書を紛失したり、内容を書き換えられたり、破り捨てられてしまったり、というような心配がありません。
→ 自筆の場合、紛失する、破棄される、隠される等の心配があります。
- Point 3すぐに相続手続きに入ることができる
自筆の場合、遺言書を勝手に開封してはいけません(勝手に開封すると5万円以下の過料(罰金のこと)になります)。自筆の遺言書は、必ず家庭裁判所に持って行き、「検認(けんにん)」という手続き(約1か月~1か月半かかります)を受けなければなりません(裁判所から相続人全員に検認日の通知が郵送で届きます)。
上記の「検認」手続きは、公正証書遺言の場合“不要”です。家庭裁判所に遺言を持って行く必要もありません。すぐに相続手続き(自宅の名義変更や預金口座の解約など)に入ることができますので、相続人の負担がありません。
- Point 4証拠能力が高い
自筆証書の場合、「本当に本人が書いたものか?」「すでに認知症だったのでは?」「誰かにむりやり書かされたのでは?」などと疑われる可能性があります(特に遺言内容に不満がある相続人から文句が出やすいです)。
万が一、争いに発展し、裁判までいった場合、自筆証書では裁判の結果、“遺言書は無効”という判決が出る可能性があります。万が一に備えたいのであれば、公正証書で遺言を作成することをおすすめします。念の為に「(認知症ではないという内容の)“診断書”」をかかりつけのお医者さんに書いてもらっておくと、さらに安心です。当事務所では、診断書の手配も承っております。
- Point 5口頭で公証人に伝えるだけで作成可能
- 公正証書遺言の場合、遺言書に記載したい内容を公証人に“口頭”または“メモ書き”で伝えれば良いので、全文を自分の手で書く必要がありません。
- → 自筆の場合、内容をよく考えて、必ず全文を自分の手で書かなければなりません。
- Point 6手続きがスムーズに進む
銀行窓口に遺言書を提出するときに、公正証書のほうが自筆の遺言書よりもスムーズに受け付けてもらえます。自筆の遺言書の場合、不備などが原因で、あとで揉める可能性を危惧し、銀行も慎重になります。
自筆証書遺言の作成ポイント
当事務所では、上記で説明した理由から「公正証書遺言」をおすすめしておりますが、
- 少しでも作成費用を抑えたい
- 公証人や立会い証人に囲まれる状況に耐えられない
- 余命がいくばくもなく、公正証書作成の手続きを踏んでいる余裕がない
などの事情がある場合は、自筆証書遺言の作成支援もさせて頂いております。
以下、「自筆証書遺言を書く場合のルールとポイント」です。
事前に調査する
- 相続人が誰であるかをはっきりさせる
- どのような財産があるのかを把握する
誰が相続人なのか、どのような財産があるのか、遺言書がない場合どのような危険性があるのか等が把握できていないと、適切な遺言書を書くことができないので、きちんと調査する必要があります。
法律のルールを守る
※遺言の書き方は、「民法」という法律で厳密にルールが定められています。ひとつでもルール違反があれば、遺言全体が無効になってしまいますので、細心の注意が必要です。
- 全文を自分の手で書く
- 日付をきちんと書く(「◯月吉日」という書き方は無効になります)
- 署名押印する(認印でも良いですが、できれば実印で)
- 書き損じを訂正するときは、民法のルールに従った訂正方法を採る
- 封筒に入れて、遺言に押したものと同じ印鑑で封印する(改ざん防止のため)
- 一目見て「遺言書である」とわかるようにしておく
- 夫婦であっても必ず1人ずつ別々に遺言書を書く(2人以上が1つの遺言書にまとめ書きした場合、無効です)
相続争いにならないように心がける
折角、遺言を書いたのに、それが原因で争いになっては本末転倒です。 以下の点に注意して下さい。
- あいまいな表現・まわりくどい表現は避け、わかりやすく書く
- 生前に話していた内容とちがうことを書かない。
- 遺言を書いた動機や、財産の分け方の理由などを書いておく
- 特定の相続人を非難するようなことは書かない
- 「遺留分」を侵害するような遺言を書く場合はよく考えて書く
- 「遺言執行者」を指定しておく
- 必ず一度専門家にチェックしてもらう