遺言と異なる遺産分割
遺言書の指定どおりに遺産を分けると相続人が困ってしまう場合があります(例:相続税が多額になってしまう等)。
そのような場合に、遺言書と異なる遺産分割をすることは可能ですが、注意するポイントがいくつかあります。
(1)被相続人が遺産の分割を禁止していない事
遺言書で遺産分割が禁止されている場合は、遺産分割を行うことはできません。
※遺言で最高5年、遺産分割を禁止することができます。
(2)相続人全員が、遺言と異なる分割を行うことに同意している事
遺言と異なる遺産分割を行うことに反対の相続人がいる場合、遺言どおりに遺産をわけないといけません。
(3)受遺者も遺言と異なる分割に同意している事
受遺者に遺贈を受ける権利を放棄してもらう必要があります。
※遺贈が包括遺贈の場合は、包括遺贈の放棄の申述を家庭裁判所に対し行う必要があります(相続開始を知った時から3か月以内)。
※特定受遺者が遺言とは異なる不動産を受け取る協議を行う場合、多額の税金が発生するかもしれません。税理士へご相談下さい。
(4)遺言執行者も同意している事
相続人は遺言執行者の執行手続きを妨げることができません。ですので、遺言執行者の同意も取り付ける必要があります。
※遺産分割協議書に、遺言とは異なる協議である旨を記載し、遺言執行者にも署名押印をもらっておくべきです。
(5)遺言書の内容によって、相続登記の手続きが異なる
<相続分の指定の場合>
「遺産を、妻に2分の1、長男に4分の1、二男に4分の1」という指定方法を「相続分の指定」といいます。遺言書の内容がこの指定方法であれば、遺言と異なる遺産分割を行っても、特に登記手続きが複雑になることはありません。
<遺産分割方法の指定の場合>
「甲不動産は長男に相続させる」という指定方法を「遺産分割方法の指定」といいます。遺言では甲不動産を長男が相続することになっているのに、これを二男が相続するよう変更するために遺産分割協議を行う場合は、相続登記の手続きが複雑になります。具体的には、一旦、長男が「相続」を原因として甲不動産を相続した上で、長男から二男へ「贈与」または「交換」を原因とする所有権移転登記を行う必要があります。
※登録免許税を2回分おさめなければいけません。
※長男→二男への贈与・交換だとみなして贈与税が課されるという事はありません。
上記のように、要件をみたせば遺言書とは異なった遺産分割を行うことは可能ですが、あとで思ってもみないトラブルが発生したり、多額の税金が発生したりする危険性もありますので、一度ご相談下さい。