民事信託(家族信託)

信託とは、「信頼して財産を託すこと」です。言い方をかえると、「自分の財産の管理・運用・処分などを、信頼できる相手に任せる」ということです。この“信託(民事信託)”という制度をうまく使うことによって、遺言や成年後見では出来ないことを実現できる場合があります。

※財産の元々の持ち主を「委託者(いたくしゃ)」、財産の管理等を引き受ける人を「受託者(じゅたくしゃ)」、財産から発生する利益をもらう人を「受益者(じゅえきしゃ)」といいます。


民事信託の活用例

認知症になる前に、資産の管理を息子に任せたい

認知症になってしまうと、息子に財産を贈与することもできませんし、賃貸借契約などを相手方と交わすこともできませんし、所有不動産の大規模修繕や建て替えなど、何もできなくなってしまいます。認知症になる前に、自分の息子と信託契約を交わすことにより、財産の管理や処分等だけを息子に任せてしまうことができます。これにより、例え認知症になってしまったとしても、息子は受託者として、息子自身の判断で、売却や建替え、リフォーム、借入、入居者との契約などを行うことができます。

 

障がいのある子どもの将来が心配

親が死んだ後に残される子どものためにも民事信託は活用できます。父親の遺産を信託財産にし、父親の死亡後、まずは母親が財産を受けるようにし、次いで母親が亡くなった後は、子どもが財産を受けとるように事前に決めておく事が可能です。さらに、子どもが死亡した後、残りの財産を子どもがお世話になった施設に寄付するという事も可能です。民事信託を利用することにより、財産を少しずつ必要に応じて子どもに給付することができますし、遺言書を書けない子どもの代わりに、最終的な財産の寄付先を決めておく事も可能になります。

 

親の実家を処分できるように備えておきたい

何も対策をしておかなかったせいで、そんなつもりはなかったのに実家が売れなくなってしまったり、空家になってしまうケースがあります。例えば、父親が亡くなった時点で母親が認知症で施設に入っているケースを考えると、まず成年後見人をつけないと遺産分割協議ができません(後見人が就任するまで4か月ほどかかります)。そしてようやく遺産分割協議を開始するのですが、成年後見人は母親の法定相続分を確保する必要があるので、空き家となった実家を母親と共有する形になってしまい、全て子どもが相続して実家を処分するということが出来なくなってしまいます。もし実家を買いたい人が現れても、実家を売却するには家庭裁判所の許可を得ないと出来ませんし(その間に購入希望がキャンセルになることもあります)、母親にそれなりの預貯金があれば、家庭裁判所の許可もおりません。そして結局、母親が亡くなるまで実家を処分することができず、空き家のまま放置せざるを得ないということになってしまいます。

両親に判断能力があるうちに民事信託を活用すれば、両親が認知症になっても実家の処分・リフォーム・賃貸ができますし、父の相続が発生しても、母の共有になってしまったり、成年後見人をつけたりする必要もありません。また成年後見制度とは違い、実家を売るときも、家庭裁判所の許可は不要なので、スムーズに売却することが可能です。

 

遺産を「後妻」→「先妻の子」の順で相続させたい

「自分の遺産は、現在の妻に相続させるつもりだが、現在の妻との間には子どもがいないので、現在の妻が亡くなった後は、残った財産を先妻との間の子どもに譲りたい」という希望も、民事信託の仕組みを活用すれば実現できます。また遺産を「後妻」→「慈善団体へ寄付」という順番で譲ることも可能です。※先妻の子には「遺留分」があるので、そこを注意しながら準備をすることが大事です。

 

あとに残されるペットのことが心配

ペットと一緒に住んでいるが、自分がいなくなった後、どうなるのかが心配と場合にも民事信託が活用できます。息子に引き取ってもらいたいがペット禁止のマンションに住んでいたり、孫がアレルギーだったりすると、引き取り手がいないケースも考えられます。ペットとペットのためのお金を信託財産にすることにより、自分が認知症になった場合や自分がいなくなった場合に備えることができます。

 

先祖代々の土地を他家の家系に相続させたくない

「先祖代々の土地は〇〇家の者にこれからも継いでいってほしい(長男の嫁など他家に継がせたくない)」場合、信託を使えば「自分→長男→次男→次男の子」という順番に土地を譲ることを今の時点で決めてしまうことができます。これを遺言で実現しようとすれば、まず自分が遺言を書き、その後長男が遺言を書き、次男も遺言を書く、という方法しかないので、自分で全てを現時点で決めてしまうことはできません。

 

事業を息子に継いでほしいが、株式(議決権)が分散してしまっている

株式を信託財産とし、議決権を集約し、信託契約期間中(分散を食い止めている間)に資金を貯めて少しずつ受益権を買い取っていき、信託契約終了時には現物の株式を取得できている、という活用方法も考えられます(ほかに「種類株式」を活用する方法もあります)。

 


民事信託(家族信託)のポイント

財産を少しずつ渡すことができる

財産を一気に渡してしまうと、もらった相続人が無駄遣いしてしまうのではないかという不安を抱えている方に有効です。

 

使用目的を限定することができる

財産の使い道を自分の思い通りに指定することができるので、「自分がいなくなったら…」という不安を抱えている方に有効です。

 

成年後見と民事信託のちがい

成年後見制度は、判断能力が低下した方を守るための制度なので、原則財産を維持する(減らさない)ことしかできません。それまで行っていた子や孫への生前贈与などの相続対策もできなくなりますし、株式投資やアパートの建替え、自宅の売却などもできません。一方、判断能力が低下する前に信託契約を結んでおけば、財産を積極的に運用することもできますし、処分することも可能です。

また成年後見の場合は、後見人や後見監督人に対する毎月の報酬も発生しますし、後見人を家庭裁判所が選任するため、全く知らない弁護士や司法書士等に財産を預けることになるので、そこに抵抗感を感じてしまう方もいらっしゃるかと思います。

また、身体に障がいのある方や浪費癖のある方などは、成年後見制度を利用することはできませんが、信託制度は利用することができます。

 

信託財産は凍結されない

預貯金や不動産などの資産は、通常所有者が死亡すると、相続手続が完了するまで「凍結」されてしまいます。預貯金などは引出しや解約ができなくなりますが、生前に財産を「信託財産」にしておくことで、相続が発生しても凍結されることはなくなります。

 

信託財産へは債権者も手を出せない

信託した財産の名義は委託者から受託者に移ります(受託者の所有物になるわけではありません)ので、委託者が借金しているような場合でも、原則、債権者は信託財産に手を出すことはできません。

※ただし、債権者を害することをわかって信託を設定した場合は、債権者が信託を取消すことができます。

 

民事信託と税金について

信託財産の受益権にも相続税や贈与税が課税されます。税金の場合は遺留分の考え方とは異なり、委託者から第1番目の受益者へ権利が相続された時と、第1番目の受益者から第2番目の受益者へ権利が相続された時の2回それぞれにきちんと相続税が課税されます。アパートの賃料などの収益受益権に関しては、相続税・贈与税も課税されるほか、不動産所得として所得税も課税されます。

※委託者と受益者が同一人物の場合、信託契約時に贈与税は課税されません(委託者と受益者が異なる場合は贈与税が課税されます)。

 

民事信託と遺留分について

信託財産に対しても、遺留分減殺請求をすることは可能です。

※ただし、第2番目の受益者までを指定している信託の場合、遺留分減殺請求ができるのは、「委託者が死亡して第1番目の受益者が受益権を取得したとき」だけに限られるとの考え方が有力です。言い換えると、その次の相続(第1番目の受益者が死亡して第2番目の受益者に権利が相続されるとき)では遺留分減殺請求をすることができないということです。

なぜそのような取扱いになるかというと、委託者が死亡した最初の相続時に、「第1番目の受益者は自分が生存している間の受益権を取得し、かつ、第2番目の受益者は第1番目の受益者死亡後から信託終了までの受益権を取得する」と考えられるためです。

 

その他の活用例

  • 法律婚以外のパートナー(内縁関係、同成婚・LGBT)に相続させたい。
  • シングルマザー(ファザー)である自分に万が一の事が起こった時に備えておきたい。
  • 脳梗塞や認知症などで判断能力が低下しても、資産が凍結されないようにしたい。
  • 生前贈与したいが、管理権は自分に残しておきたい。
  • 自分の相続だけでなく、その後の財産の行き先も自分で決めておきたい。
  • 共有不動産の管理を円滑に行えるようにしておきたい。
  • アパートを子どもらに共同で相続させたい。
  • 親が遺言書を勝手に書き換えないか心配。
  • 先祖代々の財産が他家に渡らないようにしたい。
  • 子や孫が外国人と結婚したが、相続で資産が海外に流出しないようにしたい。
  • 事業の円滑な承継を望んでいる。 など

 

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